4月からの新生活、お弁当の準備が必要になる家庭も多いのではないでしょうか。
お子さまの通う園や学校によっては5月に遠足を控えているところもあり、普段は給食で済ませられている場合でも、一度や二度は用意するタイミングがあるはず。
本記事ではそんなお弁当を安全に楽しむべく、家庭で意識したい食中毒の予防手段について、調理法や食材の選び方、保存方法などを解説します。
お弁当の衛生管理を不安に感じている方、より安全なお弁当作りを心掛けたい方は、是非参考にしてください。
手作り弁当での食中毒に注意!
毎日の昼食や行楽のお弁当などで最も重要なことはなんでしょう?
彩りをよくすることや、栄養バランスを整えること、おいしく食べられること、手を汚さずに食べられることなど、重要視すべきことはさまざまです。
なかでも「安全性」はお弁当における最重要項目です。
普段の料理と同じ感覚で作ると、食中毒の原因となる細菌の繁殖を許し、腹痛や下痢などの症状が出てしまうかもしれません。
普段の料理は作ってすぐに食べられるため、食中毒の原因菌が増え過ぎることはまずありません。
冷蔵庫で数時間置いた料理であっても、鍋や電子レンジで温めてから食べるため、再加熱による殺菌が可能です。
しかしお弁当は常温で数時間置いたものを、再加熱できないまま食べることになります。
食中毒の原因菌が付着すると、そのまま数時間かけて増殖し、食べることで症状が出てしまう可能性も。
食中毒の原因菌が増えやすいお弁当作りでは、普段の料理よりもさらに厳しく衛生管理をおこなう必要があるでしょう。
食中毒予防の3原則とコツ
食中毒を防ぐためには、食中毒予防の3原則である「つけない、ふやさない、やっつける」を守ることが重要です。
ここからはお弁当の作成や保存のコツについて、食中毒予防の3原則とともに順番に解説します。
つけない
3原則のひとつめ「つけない」では、食中毒の原因となる細菌を、食品やお弁当箱などに付着させない工夫が求められます。
手や調理器具、お弁当箱の洗浄はもちろん、食材を直接手で触れないように手袋をしたり、もしお弁当が高温に耐えられる素材であれば、まな板や包丁とともに熱湯消毒したりする方法もおすすめです。
野菜や果物など、食材の洗浄も重要です。ただし肉の洗浄は、食中毒の原因菌が飛び散る原因になるため控えましょう。
お弁当の定番であるおにぎりは、ラップにお米をのせ、ラップでくるむようにすると、手からの細菌の付着を防げます。
サンドイッチもラップで包むことができるためぜひ試してみましょう。
やっつける
肉や魚のように、食中毒の原因菌が存在する食品は少なからずあります。
そのような食品は加熱により「やっつける」ことで、安全に食べることができるでしょう。
一般的な食中毒の原因菌とされる、カンピロバクターやサルモネラ、腸管出血性大腸菌などをやっつけるためには「食材の中心温度が75度以上」の状態で「1分以上」加熱することが重要です。
冬に流行するノロウイルスは熱に強いため、やっつけるためには「食材の中心温度が85~90度以上」の状態で「90秒以上」の加熱が目安とされています。
刺身はもちろん、生焼けの肉やミディアムのステーキなどは、十分に加熱できていない食品となり、お弁当には適しません。
分厚い肉を焼いた際には包丁で切断して中身を確認し、生焼けの部分がある場合は再加熱しましょう。
野菜サラダにも注意が必要です。野菜を入れたい場合にはブロッコリーのような温野菜で食べられるものにするか、ミニトマトのような丸ごと水洗いできるものを選びましょう。
ふやさない
お弁当は作成から食べるまでに数時間置くため、その間に食中毒の原因菌を「ふやさない」ことも重要です。
食中毒の原因菌の多くは、湿気が多く、生暖かい温度帯を好みます。
そのためお弁当をよく冷やすことは非常に重要。真夏には保冷バッグを複数用意してお弁当を冷やした状態を維持しましょう。
湿気を増やす原因になる、汁気の多い料理や食材を避けることも重要です。
肉じゃがのような煮物を入れる際には汁気をよく切りましょう。
また、熱い料理をお弁当に入れてすぐにフタをすると、料理から出る湯気が表面で急激に冷やされ、水滴を生じて内部の湿度を高めてしまいます。
お弁当内部の湿度を高めないため、焼き物や炒め物などの温かい料理は冷ましてからお弁当に入れましょう。
粗熱を取る時間を考慮して、余裕のあるタイムスケジュールでお弁当作りに挑むことも重要ですね。
カットしたオレンジやキウイのような汁気の多い果物は、小さな別容器に入れるとより安全です。
抗菌食品を上手に活用!おすすめの食品や調味料4選
食中毒の原因菌の繁殖や、食材の腐敗を防ぐため、抗菌作用のある食品や調味料を用いる方法もあります。
ここからはお弁当の安全性をより高めるために役立つ、おすすめの食品や調味料を4種類紹介します。
シソの葉
シソの葉に豊富なポリフェノールには、肉や魚の臭みを和らげる効果があるため、刺身の「つま」としてよく用いられてきました。
さらにシソの香り成分には抗菌作用もあるため、刺身による食中毒のリスクを抑えるようにも機能していたようです。
サバの塩焼きやハンバーグなどに撒くことで、肉や魚の臭みを和らげつつ、抗菌効果を発揮するため、お弁当をおいしく安全に食べやすくなるでしょう。
カレー粉
カレー粉に含まれるクルクミンという成分に、抗菌効果が期待できます。
カレーそのものは汁気がありお弁当には向かないため、ドライカレーにしたり、肉や魚にカレー粉をまぶして焼いたりする方法がおすすめです。
なお、ほかの料理にカレーの臭いが移る可能性もあるため、おいしく食べたい場合には、ドライカレーのみ容器を分けるとよいでしょう。
梅干
塩分濃度の高い昔ながらの梅干しには、微生物の増殖を抑える効果があります。
梅干し由来のクエン酸にも防腐効果があるため、おにぎりの傷みを防ぐために役立つでしょう。
なお、梅干しが触れている箇所にしか抗菌効果は発揮されないため、おにぎりの抗菌効果をより高めたい場合には、梅干しがお米全体に触れるような工夫が必要です。
梅干しを細かく千切ったり潰してペースト状にしたりしたものを、米飯に混ぜ込んで握る方法がおすすめです。
梅干しを細かくする段階で菌が付着しないよう、洗浄や熱湯消毒などを済ませた食器を使用しましょう。
お酢
お酢にも抗菌効果があります。マリネは汁気が多いためお弁当には向きませんが、酢飯を用いる方法であればおにぎりのアレンジとして活用できるでしょう。
また、加熱する料理に加えることでお酢のにおいを軽減できるため、酢豚以外にも照り焼きやミートボールなどに加えると違和感なく食べられます。
おにぎり用のご飯を炊く際には、米2合に対して小さじ1杯程度のお酢がおすすめです。
お弁当は安全第一!
消毒や温度管理の徹底で食中毒を防ごう
お弁当で最も優先されるべきは、安全に食べられること。
どれだけおいしく色鮮やかなお弁当でも、食べてお腹を壊してしまっては本末転倒です。
毎日のお弁当で元気をチャージするためにも、遠足のような特別なイベントを元気に楽しむためにも、お弁当の安全性は重要です。
5月になれば気温はさらに上がり、食中毒の原因菌も増えやすくなります。
4月のうちに保冷剤や保冷バッグを用意して、お弁当を安全に食べられるようにしましょう。
<参考文献>
農林水産省|お弁当づくりによる食中毒を予防するために