食欲の秋、と呼ばれるほど、秋は野菜や果物など、さまざまな食材をおいしく食べられます。
さつまいもやブドウなど、有名な秋の味覚の影に隠れがちですが、秋においしく食べられる旬の魚も少なくありません。
本記事では9月頃に旬を迎える魚について、成分や健康効果を解説します。
おすすめの食べ方についても紹介しているため、献立の参考にぜひお役立てください。
秋の魚に期待できる健康効果
魚が体によいことは広く知られていますが、肉類と異なり、魚は旬のものを中心に店頭へ並ぶため、時期によって購入しやすい魚が異なります。
秋に手に入りやすい魚には、どのような特徴があり、どのような健康効果が期待できるのでしょう。
ω-3系脂肪酸が体へのダメージを防ぐ
秋を旬とする魚には脂の乗ったものが多く、こってりとした食べ応えのある味わいを楽しめます。
脂というと体によくないイメージを持たれている方が多いかもしれませんが、魚の脂である魚油はその逆。
魚油に含まれるω-3系脂肪酸のEPAやDHAは、活性酸素による体へのダメージを防ぐための、強力な抗酸化物質として機能してくれるのです。
私たちの体は運動や代謝によって、常に「活性酸素」と呼ばれる物質を生成しています。
体内にはこの活性酸素を除去するための抗酸化物質が存在していますが、活性酸素が増えすぎると抗酸化作用が追いつかなくなり、血管や皮膚、筋肉など、あらゆる組織がダメージを受けてしまうのです。
とくに血管や血液成分が活性酸素による酸化の影響を受けると、動脈硬化を引き起こし、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めてしまいます。
抗酸化物質を摂取して活性酸素の影響を減らすことは、アンチエイジングのみならず、生活習慣病などの疾病予防にも非常に重要です。
また、ω-3系脂肪酸であるEPAには、中性脂肪を減らす働きが確認されており、脂質異常症の改善効果も期待できます。
ω-3系脂肪酸を含む魚を摂取して、血管などへのダメージを防ぎ、若々しい体を保ちましょう。
ビタミンDがカルシウム吸収を促進する
魚類にはビタミンDも豊富に含まれています。
ビタミンDはカルシウムの吸収に関わるビタミンであり、体内で「活性型ビタミンD」に変化して、食事からのカルシウムの吸収率を高める働きがあります。
カルシウムは骨の健康維持に欠かせないミネラルですが、体への吸収率はあまり高くありません。
ビタミンDの助けを借りて骨量を維持し、骨粗鬆症を防ぎましょう。
9月の魚その1:サンマ
秋が旬の魚といえば、まずサンマを思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
塩焼きでおいしく食べられる、脂の乗った魚として有名ですね。
脂溶性ビタミンが豊富
脂の乗ったサンマからは、ビタミンAやビタミンDといった脂溶性ビタミンを効率よく摂取できます。
脂溶性ビタミンは脂質と一緒に食べることで吸収率が高まるビタミンであるため、サンマから摂取するのは効率的であると言えますね。
ビタミンAは皮膚や粘膜を丈夫に保ち、目の健康をサポートする重要な栄養素です。
またω-3系脂肪酸と同じく、抗酸化作用を発揮するビタミンでもあります。血管を若々しく保ち、活性酸素によるダメージを軽減するために活躍してくれるでしょう。
皮ごと食べてω-3系脂肪酸の摂取効率UP
サンマの皮は薄いため、こんがり焼いたサンマであれば皮もおいしく食べられます。
ω-3系脂肪酸は皮付近の身に豊富に含まれているため、皮ごと食べることでω-3系脂肪酸の摂取効率が上がります。
サンマの健康効果を余すところなく取り入れたい場合には、ぜひサンマをしっかり焼いて、香ばしく焼き上がった皮ごと食べるようにしてみましょう。
9月の魚その2:カツオ
カツオの旬は春と秋の2回あり、秋のカツオは「戻りカツオ」とも呼ばれます。
カツオは時期によって栄養素が大きく異なる魚であるため、春のカツオと秋のカツオ、両方の特徴を知って食べることが重要です。
「戻りカツオ」はω-3系脂肪酸が豊富
高たんぱく低脂質である春のカツオとは異なり、秋の戻りカツオには脂質が多めに含まれています。
ω-3系脂肪酸を効率よく摂取するためには、戻りカツオがおすすめです。
ω-3系脂肪酸は加熱により量が減ってしまうため、刺身やタタキなどで食べるのがおすすめです。
空気に長時間触れると脂が酸化して抗酸化効果が損なわれるため、作りたてを早めに味わいましょう。
鉄の摂取で貧血防止
カツオに特徴的な赤い身には、鉄が豊富に含まれています。
動物性食品に含まれる鉄は「ヘム鉄」と呼ばれ、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」よりも体への吸収率がよく、高い貧血防止効果が期待できます。
鉄はクエン酸やビタミンCと一緒に摂取すると、効率よく吸収されることが分かっています。
刺身やタタキで味わう際には、効率的な鉄の吸収のため、レモンやすだちなどの柑橘類をしぼっていただきましょう。
9月の魚その3:サケ
サケもまた、秋を旬としています。一年を通して手に入りやすい魚ではありますが、やはり秋のサケは格別です。
焼く、煮る、炒めるなど、さまざまな調理法で楽しめるのも嬉しいポイントですね。
アスタキサンチンにより抗酸化効果が倍増
サケの身の赤色は、色素成分である「アスタキサンチン」によるものです。
アスタキサンチンはカロテノイドの一種であり、ω-3系脂肪酸と同様に、強力な抗酸化物質として機能することが分かっています。
ω-3系脂肪酸は熱に弱く加熱調理で失われやすい性質があります。
一方、アスタキサンチンは熱に強いため、焼き鮭やクリーム煮など、しっかりと熱を通した料理でも十分な抗酸化作用が期待できるのです。
もちろん、刺身にして食べればアスタキサンチンとω-3系脂肪酸、両方の抗酸化効果を十分に得られます。
さまざまな調理法でサケを味わってみましょう。
旬以外の時期には缶詰の活用もおすすめ
秋に旬を迎えるサケですが、旬以外の時期には、サケの中骨缶などの缶詰を利用するのもよい方法です。
缶詰のサケは骨ごと食べられるため、カルシウムの摂取源としても活躍できます。長期保存が可能であり、スーパーでの魚の価格が高騰している時期にも取り入れやすいため、いくつか購入してストックしておけば献立の強い味方となってくれることでしょう。
若々しく元気な体づくりに秋の魚が大活躍!
サンマやカツオ、サケは良質なたんぱく質食品であることはもちろん、効率よくω-3系脂肪酸を摂取できる食品でもあります。
また、ビタミンDや鉄など、骨粗鬆症や貧血の予防に役立つ栄養素も豊富です。
秋の魚をおいしく食べて血管や血液、骨の状態を良好に保ち、若々しく健康的な体を目指しましょう。