秋には甘みの強いさまざまな果物が旬を迎えます。
中でも柿は10~11月にかけて手頃な価格で手に入るため、口にする機会も多いのではないでしょうか。
生で食べてもおいしい柿ですが、渋柿や熟しすぎた柿などは加工することで、無駄なくより甘みの増した味わいを楽しめます。
本記事では柿の摂取により期待できる健康効果と、おすすめの食べ方について紹介します。
柿のメリットやおいしさを十分に理解して、甘い秋の味覚を存分に楽しみましょう。
柿ってどんな果物?
柿は日本においてメジャーな果物です。秋が旬であることや、甘柿と渋柿があることはみなさんもよく知っているのではないでしょうか。
渋柿は渋みの成分である「タンニン」が豊富であるため、そのままではおいしく食べられず、調理に一工夫必要です。
しかし甘柿も渋柿も、同じように栄養価が高く、健康や美容をサポートするさまざまな栄養素を含んでいるのです。
柿に期待できる効果について、柿に豊富な成分に注目して確認してみましょう。
抗酸化作用を持つビタミンCやβカロテンが豊富
柿にはビタミンCやβカロテンなど、抗酸化物質として機能する栄養素が豊富に含まれています。
抗酸化物質には、体内で発生した活性酸素の働きを抑える効果が期待できます。
私たちは日々の生活において、エネルギーを得るために酸素を消費しています。
酸素の消費の過程で発生する活性酸素は、過剰に蓄積すると血液成分や血管、皮膚や髪など、体のさまざまな部位にダメージを与えてしまうのです。
活性酸素によるダメージ「酸化ストレス」を放置しておくと、病気や老化の原因となるため、抗酸化物質により適切に除去することが重要です。
私たちの体内にも、活性酸素を除去するための抗酸化能力が備わっています。
しかし活性酸素は加齢とともに発生量が増えているため、年齢を重ねると体内の抗酸化能力だけでは十分に活性酸素を除去できないことも。
食事由来のビタミンCやβカロテンなどで抗酸化能力を強化すれば、活性酸素の働きを抑えやすくなるでしょう。
血管や肌を若々しく保ちたい方、皮膚や髪のトラブルを防ぎたい方は、ぜひ秋のデザートやおやつとして柿を活用してみましょう。
柿ポリフェノールが血糖値の上昇を抑える
植物には機能性成分であるポリフェノールが含まれており、それぞれ独自の働きを持っています。
柿由来のポリフェノール、通称「柿ポリフェノール」に認められているのは、消化管内での糖質の消化や吸収を抑制する働きです。
ヒトを対象とした試験において、血糖値の上昇を抑制する効果が確認されています。
甘いものや穀類などを食べて血糖値が急激に上昇すると、血糖値を下げるためのホルモン「インスリン」の分泌が増え、余った血中の糖を体脂肪として合成する働きが盛んになります。
血糖値の上昇を抑えることでインスリンの分泌量を減らすことができれば、体脂肪合成の抑制にもつながるため、ダイエットのサポートとしても役立つでしょう。
ダイエット中の方や糖尿病予防を意識している方にも、柿はおすすめできる果物です。
甘い柿を適量楽しんで、ストレスなく健康管理を続けましょう。
柿タンニンがLDLコレステロールを減少
柿の渋みの原因は、ポリフェノールの一種であるタンニンの「シブオール」です。
渋柿を食べて強い渋みを感じるのは、このシブオールが口の中で水に溶けるためです。この柿タンニンは甘柿にも渋柿にも含まれています。
渋みの原因となる厄介な成分のようにも思えますが、血中のLDL(悪玉)コレステロールを減少させるという、素晴らしい健康効果も確認されているのです。
LDLコレステロールの増加は血液をドロドロにして、血流の滞りを招きます。
またLDLコレステロールの酸化は血管を傷つけ硬くするため、動脈硬化の原因にもなります。
柿の摂取でLDLコレステロール値をコントロールして、サラサラの血液を目指しましょう。
おすすめの食べ方4選
このように、柿の成分には若々しさを保つ効果や、体脂肪合成を抑える効果などが期待できます。
さまざまなよい効果を得られる柿を、旬の時期においしく食べたいものですよね。
柿は生で食べるのみならず、さまざまな食べ方を楽しめます。おすすめの加工法についていくつか紹介しましょう。
飽きずにおいしく柿を食べる方法として、ぜひ参考にしてください。
甘柿は皮を剥いてそのまま食べる
渋みのない柿である「甘柿」は、渋抜きをする必要がなく、皮を剥くだけでそのままおいしく食べられます。
柿の渋みの原因は柿タンニンのシブオールです。シブオールが口の中で溶けることで強い渋みを感じますが、甘柿は成熟の過程でシブオールが、水に溶けない「不溶性」に変化しています。
不溶性のシブオールを食べても渋みを感じることはないため、生でもおいしく食べられるのです。
完熟の柿はなめらかな舌触りが特徴的であり、完熟前の柿ではシャキっとしたよい歯ごたえを楽しめます。
熟れ具合による食感や甘さの違いも楽しんでみましょう。
渋柿は干して甘みと栄養価を濃縮!
水に溶ける「水溶性」のシブオールが含まれている渋柿は、そのままでは食べられません。
渋柿をおいしく食べるためには、干し柿にする方法がおすすめです。
渋柿の皮を剥いた柿のヘタに紐を結びつけ、吊るせる状態を作りましょう。
沸騰したお湯に5秒ほどくぐらせれば殺菌できるため、干している間のカビの増殖を防げます。
陽当たりがよく、雨が入ってこない場所が柿を干すためにおすすめです。
1週間ごとに軽く指で押すようにしてもみ、手入れをしておきましょう。雨の少ない低湿度の気候であれば2~3週間ほどで完成します。
干し柿は冷凍保存もできるため、1つずつラップでくるんで冷凍庫に入れておけばより長期間楽しめるでしょう。
アルコールで渋抜きすれば渋柿も生でおいしく
渋柿をおいしく食べる方法として、アルコールでの渋抜きもおすすめです。
渋柿をシャリシャリとしたみずみずしい形で味わいたい場合には、渋抜きを試してみましょう。
柿の皮を剥かず、ヘタの部分を焼酎など、アルコール濃度が30%程度のものに5秒ほど浸してから拭き取ります。
密閉袋に入れて直射日光を避け、涼しい場所で保存しましょう。1週間から10日頃で渋みが抜けて、食べやすくなります。
柿をアルコールに浸すと、実の中でアセトアルデヒドを生じます。シブオールはアセトアルデヒドと結合して不溶性に変わるため、口の中で溶けず、渋みを感じなくなるのです。
アルコールで渋抜きした柿の断面に見られる小さな黒い点は、不溶性になったシブオールです。
人体に害があるものではないため、黒い点が見えても捨てずにおいしくいただきましょう。
熟しすぎた柿はジャムに加工
甘柿は熟しすぎるとやわらかくなり、包丁でカットするのも苦労するほどです。
甘みは抜群に出ていますが、やや表面がドロドロとしており、食感を苦手とする方もいるかもしれません。
熟しすぎた柿をおいしくいただきたい場合、ジャムへ加工するのもよい方法です。
柿と砂糖を混ぜ、ジャムのとろみを増すためのレモン汁を少々加えて煮るだけです。
耐熱容器を使用すれば電子レンジでも手軽に作れて、長期にわたり保存が可能です。
ジャムは完熟の柿だからこそ、甘くとろみのあるおいしいものが出来上がります。
鮮やかな色の柿を長く楽しむ方法として、ぜひ柿ジャムの作成に挑戦してみましょう。
どのくらい食べていい?1日の目安量を解説
柿は一度にたくさん収穫できますが、保存性の高い食品ではないため、生の柿は早めに食べなければいけません。
腐らせるのはもったいないからと、1日に何個も食べてしまう方もいるかもしれませんね。
健康や美容のサポートに役立つ成分を多く含む柿ですが、食べ過ぎは禁物です。
柿を食べる際の目安量と、食べ過ぎが招く危険性について解説しましょう。
1日1~2個を、おやつやデザートに
甘柿は100gあたり63kcal、渋柿は100gあたり59kcalです。
柿1個の重量は約150~200gであるため、柿1個のカロリーは約100~120kcalと考えておきましょう。
おやつやデザートとして食べる場合、1日1~2個が適切な量の目安です。
生の柿であれば2個食べるとかなりの重量になり、よく噛んで食べることで満足感も得られるため、食べ過ぎを防ぎやすいでしょう。
一方で、干し柿は小さく食べやすいため、一度に3つも4つも食べる場合があるかもしれません。
しかし干し柿は元々、渋柿1個の糖分やほかの栄養素が濃縮されたものであるため、食べ過ぎによるカロリーオーバーを招きやすく、注意が必要です。
小さな干し柿も、生柿と同様に1日1~2個の量を守って食べるようにしましょう。
食べ過ぎによる胃石に注意
柿の食べ過ぎはカロリーオーバーの原因となることに加え、胃石を生じるリスクを高めてしまいます。
胃石は食べ物が胃の中で消化されず、塊となって残る現象です。胃に留まると食欲不振を招くほか、腸へ流れると腸閉塞の原因にもなります。
柿による胃石の原因は、柿に含まれるシブオールという成分です。
シブオールは胃酸と混ざる食物繊維と結合して固まるため、胃石を作りやすいのです。
柿胃石を生じた患者では、1日に2~3個の柿を食べていたケースが多く見られたそうです。
食べ過ぎによる柿胃石には十分注意しましょう。
まとめ:量を守って秋の味覚をおいしく食べよう
柿からはビタミンCやβカロテンなど、健康や美容のサポートに役立つさまざまな成分をおいしく摂取できます。
熟しすぎた柿や渋柿も、加工法を工夫すればおいしく食べられますね。
一方で、食べ過ぎによるカロリーオーバーや柿胃石には注意が必要です。
1日1~2個を摂取の目安として、適量をおいしく味わいましょう!