お正月に食べるものといえば、やはりおせちですよね。
昔は正月の保存食としての意味合いが強かったおせちですが、最近は元日のみに親族が集まり食べる行事食として親しまれています。
おせちには大量の料理があり、全てを一から作るのはたいへんな手間が掛かります。
そのため料亭などから販売されているおせちを予約購入して、正月のごちそうとして楽しむ方も多いようですね。
自宅で一から作る習慣が薄れようとも、おせちは多くの日本人のお正月に欠かせないものとして愛されています。
今回はそんなおせちの歴史や豆知識について解説しましょう。
また、おせちに欠かせない料理の中から、比較的簡単に作れるものをいくつか紹介します。
おせち全体を用意することに難しさを感じている方は、まず簡単なものから挑戦し、おせち作りの雰囲気を味わってみてください。
おせちについて知ろう
近年では「ごちそうの多い正月料理」をおせちと呼んでいます。
毎日家事に奔走している方々が、せめてお正月の3日間くらいは料理をお休みできるように作る、という意味合いもあったようです。
おせち料理はお重に詰められるのが一般的ですが、地域によってお重への詰め方やお重の数も異なるようですね。
甘い料理が多いのはなぜ?
おせちには「伊達巻き」「黒豆」「栗きんとん」など、甘く味付けされた料理が並びます。
また、ほかの料理も全体的に味の濃い印象を受けるのではないでしょうか。
おせちは「年末に作り、正月の3が日にかけて食べる保存食」です。
その間に料理が腐らないよう、保存性の高いものを作らなければいけません。
甘い味付けのもとである砂糖には保水性があります。
砂糖に取り込まれた水は細菌が利用できない状態になるため、料理の細菌が繁殖しづらくなります。
ジャムや羊羹など、水分量の多いはずのお菓子が腐りにくいのは、砂糖により水が守られているためなのです。
また、砂糖と同様に塩も料理を傷みにくくする効果があります。
塩は逆に食品から水分を出して、細菌が利用できる水を減らしています。漬物が長期間保存できるのも同じ理由ですね。
甘い料理や味の濃い料理を並べることで、おせちを安全に食べられるようにしていたのです。
しかし、最近のおせち料理は保存食よりも「元旦の行事食」の意味合いが強いため、その日のうちに食べきることを前提とした、薄めの味付けのおせちも用意されているようです。
濃い味付けが苦手で薄めの味付けにしたい方は、大晦日に作ったおせちを翌日の元旦に食べきれるよう、作る量を調整しておきましょう。
おせち料理にはそれぞれ意味がある!
おせちは保存食であると同時に、家族の健康や繁栄を願う「縁起物」としての意味合いもあります。
おせちは豪華な重箱に詰められるのが一般的ですが、これは「神様をお迎えする食事」であることを意味しているようです。
また、両側が細くなった「祝い箸」を用いるのも、お家にお迎えした神様とともに頂く「神人供食」の意味合いがあるのだとか。
片方が人間、もう片方を神様が使って食べているようです。
料理にもそれぞれ意味があります。
たとえばハマグリは二枚の貝がほかのハマグリとは絶対に合わず、お互いだけピタリと重なることから「夫婦円満」「良縁」の意味があるようです。
また、赤と白のかまぼこは「日の出」をイメージしており、正月の神聖な印象を持たせるために役立っています。
最近では牛や豚など、昔は入れてはいけないとされていた食材も用いられる傾向にあるようです。
しかし昔ながらのおせち料理は今でも受け継がれ、豪華なお重のあちこちに散りばめられています。
料理や食材の意味を調べながら食べるのも、おせちの楽しみのひとつかもしませんね。
簡単にできるおせち料理を紹介
おせち料理は手間がかかるイメージが強いかもしれませんが、いくつかの料理は比較的簡単に作ることができます。
今回はおせちに馴染み深い5つの料理を、食材の由来や期待できる健康効果とともに紹介しましょう。
まめに働き暮らす「黒豆」
黒豆には「まめに働く」「まめに暮らす」という意味合いがあり、健康な体で元気に働き暮らせますようにといった願いが込められています。
甘く味付けされた黒豆は子どもにも人気のおせち料理ですよね。
黒豆の黒い色の正体はポリフェノールです。ブルーベリーと同じ色素成分であるアントシアニンが豊富に含まれています。
アントシアニンは抗酸化物質として機能し、病気や老化を予防するように働いてくれます。
縁起物としての意味合いもさることながら、成分としても健康効果が期待できる食材と言えるでしょう。
乾燥した黒豆は1日かけて水で戻し、3時間かけて下茹でしてからシロップとともに煮る必要があります。
日にちのかかる料理ではありますが、ずっと台所に縛り付けられるわけではないため、年末の忙しい時期にも比較的用意しやすいでしょう。
アントシアニンは、鉄イオンと結合することで色が安定します。
黒豆を下茹でする際には鉄製の鍋を用いたり、錆びた釘を入れたりすることで、鉄イオンとの結合を促せます。
ツヤツヤとした美しい黒豆を作りたい方は、ぜひ鉄製のものを用意してみてください。
子孫繁栄の「数の子」
数の子はニシンの魚卵を塩漬けにしたものです。
たくさんの卵は「子孫繁栄」のイメージが強く、一家の繁栄を願う意味でおせちに入れられることの多い食材です。
魚卵にはたんぱく質もさることながら、良質な脂質が豊富に含まれています。
とくにDHAやEPAといったω‐3系脂肪酸には、LDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪を減らす働きが期待できます。
血中脂質のコントロールにより血液がサラサラになるため、血流の改善効果も得られるでしょう。
塩漬けにされた数の子は、そのままでは塩分濃度が高すぎるため、一度塩抜きする必要があります。
適度に塩を抜いた上で調味液に漬け直すことでおいしく食べられるようになるでしょう。
塩分濃度の濃い食品を塩抜きする際には、1~1.5%程度の塩分濃度の水に漬けると、食品が水っぽくならず適度な濃度に仕上がります。
この方法は「塩で塩を呼ぶ」ということから「呼び塩」「迎え塩」とも呼ばれます。
数の子をおいしく頂く工夫として、ぜひ覚えておきましょう。
五穀豊穣を願った「田作り」
小さなカタクチイワシの乾燥品に、醤油、砂糖、みりんなどで甘辛く味付けをしたものが田作りです。
昔、イワシを田んぼの肥料にしたところ豊作になったことから「田作り」と呼ばれるようになったそうです。
魚であるイワシに「五穀豊穣」の願いが込められているのには、このような由来があったのですね。
小魚は骨まで丸ごと食べられるため、カルシウムの供給源として活躍できます。
カルシウムといえば乳製品ですが、おせち料理などの和食には合わせづらいもの。
田作りを食べておいしくカルシウムを補給しましょう。
田作りの作り方は非常に簡単です。
醤油や砂糖、みりんを煮詰めた熱々のタレを、カタクチイワシにさっと絡めてクッキングシートの上に広げましょう。
冷めきらないうちに一匹一匹を引き離し、ゴマをふりかければ完成です。
カルシウム補給が重要となる子どものおやつにも適しているため、お正月以外の時期にも活用してみてはいかがでしょう。
豊富な知恵を期待した「伊達巻き」
伊達巻きは甘い卵焼きのイメージが強いかもしれませんが、材料にはんぺんが用いられています。
書物のような巻物に見た目が似ていることから「知恵が増えますように」という願いが込められているようです。
「伊達」とは、派手やお洒落を意味する言葉です。
鮮やかな色から「お洒落な卵焼き」という意味合いでこの名前が付けられたのでしょう。
はんぺんは魚のすり身を原料とした食材です。
はんぺんと卵という、良質なたんぱく質の組み合わせからなる伊達巻きは、骨のある魚や硬い肉が食べづらい子どもやお年寄りにもおすすめの料理です。
伊達巻きはオーブンを使わずとも卵焼き機でおいしく作ることができます。
はんぺんや卵、砂糖に麺つゆなどを加えてフードプロセッサーにかけたものを、熱した卵焼き機に一気に流し込みましょう。
アルミホイルで蓋をして弱火で蒸し焼きにすれば、全体に火が通った形で綺麗に仕上がります。
引き上げたものを巻き簾でゆっくり巻き、輪ゴムで固定してしばらく置けば完成です。
お正月ならではのお洒落な卵焼きを楽しみましょう。
健康祈願の「エビ」
おせちといえばエビがつきものですよね。
背中を大きく曲げた状態で重箱に詰められたエビには、腰が曲がっても健康でいられるようにという「健康長寿」の願いが込められています。
エビの赤色は、サケの赤色と同じ「アスタキサンチン」という色素によるものです。
アスタキサンチンは非常に強い抗酸化作用を持ち、病気や老化を防ぐ成分として役立ちます。
エビは高たんぱく低脂質な食品でもあるため、脂質の摂りすぎを気にされる方でも気兼ねなく食べられるでしょう。
エビはそのまま加熱すると背中が伸びてしまうため、背中を曲げた状態でつまようじや串で固定する必要があります。
背わたを取ってから背中を固定し、たれに漬けて煮込みましょう。
耐熱容器に入れれば電子レンジ加熱での作成も可能です。
よりお手軽にエビの祝い煮を作りたい方は、ぜひ電子レンジでの加熱を試してみてください。
まとめ:正月におせち料理を健康的に楽しもう
おせちは保存食や行事食、縁起物など、様々な意味合いがある重要な料理です。
ひとつひとつの料理に素晴らしい意味があり、また食材に含まれる成分にも様々な健康効果が期待できます。
全ての料理を一から作るのはたいへんな手間がかかります。
完全な既製品を注文するのもよい方法ですが、手軽に作れる分だけでも自宅で用意してみると、お正月がより華やかになるでしょう。
お正月くらいは、家族団らんでゆっくり過ごしたいもの。
年末の予定と相談しながら、負担のない方法で、手軽におせちを楽しみましょう。