夏秋には多くの果物が旬を迎えます。
梨は水分量が多く、みずみずしいことから、まだ暑さの残る初秋のフルーツとして高い人気を集めていますね。
おいしいことに加え、梨に含まれる成分にはさまざまな効果が期待できそうです。
本記事では梨の特徴や梨を食べるメリット、梨の保存方法などについて解説します。
梨について詳しく知り、よりおいしく梨を食べるための情報としてぜひ参考にしてください。
梨ってどんな果物?
梨はリンゴに似ていますが、どのような果物であるか詳しく把握している方は少ないかもしれませんね。
まずは梨の概要について、リンゴと比較しながら簡単に解説しましょう。
温暖な地域で栽培される
梨はとくに千葉県や鳥取県、茨城県、栃木県などで栽培が盛んな果物です。
栽培地域は本州の中部から九州北部におよび、比較的温暖な地域で生産されていることがわかるでしょう。
似た果物であるリンゴは青森や秋田といった東北地方や、長野のような高地での栽培が盛んです。
梨は生育期間中の気温が高い場所の方が育ちやすいため、本州の中部より南側の温暖な地域は、梨の栽培に適しているようです。
一方、リンゴが色づくためには秋ごろに低温になる必要があるため、気温が上がりすぎる地域では栽培が難しいでしょう。
梨とリンゴが並んで栽培されている光景を見られない理由は、生育に必要な温度差が大きすぎて同じ地域で栽培できないためであったのですね。
リンゴよりも水分が多く低カロリー
梨とリンゴは形こそよく似ていますが、食感や栄養価には大きな違いがあります。
【梨とリンゴ100gあたりの栄養価(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)】
梨(日本なし) | リンゴ | |
カロリー(kcal) | 38 | 53 |
炭水化物(g) | 11.3 | 15.5 |
水分(g) | 88.0 | 84.1 |
カリウム(mg) | 140 | 120 |
ビタミンC(mg) | 3 | 4 |
梨は、このようにリンゴよりも水分量が多い関係で、炭水化物の量が少なめで、カロリーもやや低いようです。
また、梨の方がミネラルの一種、カリウムを多めに含む点も特徴的です。
なお、果物はビタミンCの摂取源として注目されがちですが、梨やリンゴにはほとんど含まれていません。
ビタミンCを摂りたい場合には、イチゴやレモンのような酸味のある果物を選びましょう。
梨を食べると何にいい?
全体の約9割が水分で構成される梨ですが、含まれる成分にはさまざまな効果が期待できます。
ここからは梨に特徴的な成分とその効果について解説します。
むくみや高血圧の対策に
梨からはリンゴよりも多くのカリウムを摂取できます。
カリウムはむくみや高血圧の予防に効果的なミネラル。
体内の余分なナトリウムを、水分とともに体外へ出すように働きかけてくれるのです。
カリウムやナトリウムは体液調節に関わるミネラルです。
味の濃い食事には食塩の形でナトリウムが多めに含まれているため、現代の食生活はナトリウムを摂りすぎる傾向にあります。
梨のような果物からカリウムを積極的に摂る癖を付けることで、余分なナトリウムを外へ出し、むくみや高血圧を防ぐ効果が期待できるでしょう。
太るリスクを抑えつつ甘さを堪能
梨に含まれている糖のひとつに「ソルビトール」があります。
ソルビトールはやさしい甘さを持つ糖類であり、腸での吸収率が低く、グルコースやフルクトースといったほかの糖類よりもカロリーになりにくい点が特徴的です。
そのため、十分な甘さを楽しみつつ摂取カロリーを抑えたい場合のフルーツとしておすすめです。
また、ソルビトールは血糖値の上昇が比較的緩やかです。
血糖値が急激に上がると、血糖値を急いで下げようとして、体脂肪合成を促すホルモン「インスリン」が大量に分泌されてしまいます。
体脂肪合成のリスクを減らすためには、血糖値を緩やかに上げる食品選びが重要。
太りにくい食生活のサポートに、ソルビトールが豊富な梨は役立つでしょう。
食物繊維で腸内をスッキリ
ソルビトールは腸であまり吸収されず体外に排出されやすいため、やや食物繊維に似た特徴を持つとも言えるでしょう。
また、梨からはペクチンをはじめとする水溶性食物繊維も摂取できます。
食物繊維は腸内で善玉菌のエサになり、善玉菌を増やすように働きます。
腸内環境を整えることで、便秘を解消したり、肌荒れを防いだりといった効果が期待できるでしょう。
腸活にはヨーグルトや納豆のような発酵食品に加え、善玉菌を増やしやすい食物繊維の存在が欠かせません。
梨のような果物から、食物繊維をおいしく取り入れましょう。
たんぱく質の消化をサポート
梨の面白い効果として、たんぱく質の消化をサポートするというものがあります。
秘密は、梨に含まれる「プロテアーゼ」にあります。
プロテアーゼはたんぱく質を分解する酵素であるため、肉や魚、卵といった高たんぱく質食品の消化を助ける効果が期待できるでしょう。
焼肉のようなたんぱく質が多い食事の際には、梨を取り入れると消化の助けになるかもしれません。
また、梨の効果は料理にも発揮できます。
生の肉にすりおろした梨を加えて揉みこむことで、プロテアーゼが働き、肉がやわらかくなるのです。
肉をやわらかくしたい方は、ぜひ梨を活用してみましょう。
梨は冷やしてより甘く!
果物のなかには冷やすことで甘みが増すものがある、とはよく知られている情報ですが、梨も冷やすことでより甘くなる果物のひとつ。
梨にはソルビトールのほか、果糖も豊富に含まれています。
果糖は冷やすことで成分が変化し、より強い甘みを出すようになるのだとか。
一方、バナナやミカン、イチゴのような果物は、果糖ではなくショ糖を多めに含む果物です。
冷やしても甘みが増す効果はあまりありません。
常温で保管できるバナナやミカン、イチゴ狩りなどで常温で収穫してもそのままおいしく食べられるイチゴなどは、イメージとしても「冷やさなくてもいい」と認識しやすいのではないでしょうか。
なお、極端に冷やしすぎると私たちの舌が甘みを感じにくくなるようです。
果物を冷やす際は10度前後の場所での保管がおすすめ。
そのため冷蔵庫を使用する際には、低温のチルド室などは避け、野菜室のような温度の低くなりすぎない場所を選びましょう。
残暑の厳しい初秋に甘い梨を楽しもう
みずみずしい梨は、暑さの残る9月ごろの水分補給としても活用できるおいしい果物です。
太るリスクを抑えたフルーツとして食べるもよし、肉の消化をサポートするための食材として使用するもよし、さまざまな用途に活用できるでしょう。
旬の梨はとくに水分量が多く、おいしさも格別です。
ぜひ初秋にはみずみずしい梨を堪能してみましょう。
<参考文献>
文部科学省 | 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食品成分データベース)