暑さが強まる6月以降には、熱中症のリスクも高まります。
熱中症予防には水分補給、とはよく言われていることですが、飲むべき水の量や塩分の必要性などについて、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では水分補給の基本として、1日に飲むべき水の量や飲み方のコツ、スポーツをする際の飲み物の選び方や、経口補水液の必要性などについて解説します。
適切な水分補給の方法を知りたい方や、熱中症に注意すべきタイミングを確認したい方は、ぜひ参考にしてください。
熱中症予防には水分補給が重要!
熱中症とは高温多湿な環境下で、発汗による体温調節が十分にできず、体内に熱がこもった状態を指します。
屋外での発症が多いものの、屋内でも起こることがあるため油断は禁物です。
屋外でも屋内でも、熱中症予防のためには水分補給が重要です。
まずは水分補給のポイントについて、基本的なところから確認しましょう。
成人に必要な飲み水は1日約1.2L
私たちは毎日水分補給を必要としていますが、それは私たちの体から毎日大量の水分が失われているから。
成人の場合、尿や便から約1.6L、汗や呼気などから約0.9Lで、1日の水分喪失量は約2.5Lになるとも言われているのです。
では1日に2.5Lの水を飲まなければいけないのかというと、そうではありません。
私たちは1日の食事で約1Lの水分を摂取できています。
また体の代謝により生成される水が約0.3Lあるため、実際に飲み水から摂るべき水分は、約1.2Lと計算できるでしょう。
1.2Lは600mLのペットボトル2本分。
少し多いと感じる方もいるかもしれませんが、体に必要な量として毎日飲めるようにしたいものですね。
1回の給水量はコップ1杯を目安に
1日に必要とされる飲み水の量は約1.2Lですが、一気に大量の水を飲むようなやり方では体へ十分に水分を取り込めません。
大量に水を飲むと下痢を生じることもあるため、水分補給はこまめに少量ずつおこないましょう。
1回の水分補給でコップ1杯、約200mLを飲むことを目標にしましょう。
1日にコップ1杯の水を飲む機会を6~7回設けることができれば、水分が大きく不足することもないでしょう。
いつ水を飲めばよいか迷う場合には、次のようなタイミングがおすすめです。
• 起床後や就寝前
• 出かける前や帰宅後
• 運動前後
• 入浴前後
運動や入浴では発汗が起こるため、水分の必要性を感じやすいものですが、就寝中の熱中症は見落とされがちです。
ぜひ寝る前の水分補給も習慣化させてみましょう。
スポーツ時の水分補給のコツ
普通の生活では1日あたり約1.2Lの水分補給が目安となりますが、スポーツや労作業などで汗を多めにかく場合には、汗で失われた分を多めに取る必要があるほか、水分補給の方法も少し変えるべきです。
ここからはスポーツをしているときの水分補給のポイントについて解説します。
軽く汗ばむ程度であれば水やお茶でOK
スポーツをしている場合に、甘いスポーツドリンクを必ず飲む方もいるかもしれませんが、スポーツドリンクは必ずしもスポーツの前後に必要な飲料というわけではありません。
快適な気候でのウォーキングやジョギング、冷房の効いた屋内での筋トレなど、少量しか発汗しないような環境であれば、水分補給は水やお茶のままで問題ありません。
スポーツドリンクは飲みやすさの向上のため、多めに糖分を加えているものもあります。
飲みすぎてカロリーオーバーになれば太るリスクも高まるでしょう。
運動中は必ずスポーツドリンク、との考えを捨て、発汗量に応じて種類を調整しましょう。
持久力運動では塩分と糖分を摂れるものを
マラソンや登山などの持久力運動においては発汗量も増えるため、塩分が摂れるスポーツドリンクを選びましょう。
軽いウォーキングやジョギングとは異なり、持久力運動ではより多くのエネルギーを消費し、体力も激しく消耗します。
糖分の多いスポーツドリンクでの水分補給は、脱水の防止に加え、運動のパフォーマンスを高めるためにも役立つでしょう。
経口補水液は飲むべき?
経口補水液は水と塩分と糖分を含んだ飲料で、体に水分を効率よく吸収できるよう調整されたものです。
ここからは経口補水液の必要性と注意点について解説します。
塩分濃度が高く常飲には不向き
経口補水液の塩分濃度は非常に高く、スポーツの度に飲んでいては塩分を摂りすぎてしまいます。
塩分の摂りすぎではむくみや高血圧のような別の問題が生じるため、水分補給において、塩分は必要最小限に抑える必要があります。
塩分濃度の高い経口補水液は、軽度から中度の脱水症状が認められたときに飲むもの。
スポーツをしたり外出したりするタイミングで、予防目的に毎回飲むようなものではない点に注意しましょう。
非常時に備えて1本携帯しておこう
経口補水液は塩分濃度が高く、常に飲む飲料としては適していない一方で、速やかに体に水を送りこむためのサポートアイテムとしては非常に優秀です。
そのため脱水症状が現れはじめたときに備えて、スポーツや労作業などのタイミングには1本を持ち歩き、いざというときに飲めるようにしておくことをおすすめします。
常温でも問題ありませんが、冷やした水は常温のものより速やかに吸収される性質があるため、ぜひ保冷剤と合わせて携帯しておきましょう。
プール前後にも欠かさず水分補給
6月には学校でプール開きが始まります。
レジャーとしてプールで遊ぶ方も増えることでしょう。
プールでは汗をかいた実感が湧きづらく、さらに口の中が水で塗れることが多いため喉の渇きを感じにくいことから、水分補給がおろそかになりがち。
学校ではプールにおける熱中症も頻発しています。
プールを安全に楽しむためにも、泳ぐ前後で水分補給をおこなうことを習慣付けた方がよいでしょう。
飲酒は水分補給にならない
ビールやハイボールのような、のど越しのよいお酒で水分補給を済ませようとする方もいるかもしれませんが、絶対にやめましょう。
アルコールには強力な利尿作用があり、たとえば1Lのビールを飲むと1.1Lの水分が尿として出ていくと言われているほどです。
飲めば飲むほど体内の水分があとで失われる可能性があるため、脱水予防として飲むと逆効果になり、脱水のリスクを高めてしまいます。
また、アルコール飲料の摂取量が増える状況も避けるべきです。
酔いが強まった泥酔状態で、万が一路上や公園などで寝てしまった場合、熱中症をはじめ、交通事故や盗難などさまざまなリスクが生じます。
夏にはビールやハイボールがよりおいしく感じられますが、飲みすぎることなく量を調整することが重要。
水分補給は水や麦茶のような、利尿作用の少ないものでおこないましょう。
適切な水分補給で長く暑い夏を乗り切ろう
年々暑くなる夏を元気に乗り切るため、適切な水分補給は欠かせません。
成人であれば1日に約1.2Lが水を飲む量の目安となります。
1回につきコップ1杯程度の水分補給を、1日に6~7回おこなえれば、熱中症も予防しやすくなるでしょう。
経口補水液は有用ですが、飲みすぎは高血圧のようなほかの健康リスクにつながる可能性があります。
脱水の傾向が見られたときに素早く水分補給をおこなうための、お助けアイテムとして携帯しておきましょう。
<参考文献>
厚生労働省|熱中症予防のための情報・資料サイト