秋に旬を迎える魚といえばさんま。脂がたっぷり乗ったホクホクの味わいを楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。
魚が体によいとはよく言われることですが、とくにさんまからは魚特有の栄養素をたっぷり摂取できるのです。
本記事ではさんまの特徴や期待できる効果、健康的にさんまを食べる方法などについて解説します。
おいしさと健康を両立できる食事の主役として、本記事を参考に、ぜひさんまを取り入れてみましょう。
さんまってどんな魚?
さんまは有名な魚であり、日本ではよく食べられています。
しかしアジやタラなど、ほかの魚との違いについてはあまり知られていないかもしれませんね。まずはさんまの特徴について解説します。
9~11月に旬を迎える
さんまは9月ごろから獲れはじめます。
さんまは海の気温の変化にあわせて北から南へ移動するため、獲れる場所も時期により異なる特徴があります。
さんまの漁場は9月に北海道から始まり、徐々に南へ移ります。
魚群が東北から関東の沖合を通る10~11月がさんまの最盛期。脂がたっぷり乗ったさんまを楽しみやすいのもこの頃でしょう。
よりおいしいさんまを食べたい場合は10~11月ごろの脂の乗ったさんまがねらい目です。
良質な油がたっぷり!
さんまはこってりとした味わいが特徴的ですが、その秘密は脂質の含有量にあります。
一般的な魚類のなかでも、さんまはトップクラスの脂質含有量を誇ります。
【魚類100gあたりの脂質量(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)】
食品 | カロリー(kcal) | 脂質量(g/100g) |
さんま(皮つき) | 287 | 25.6 |
ぶり | 222 | 17.6 |
たいせいようざけ(養殖・皮つき) | 218 | 16.5 |
かつお(秋獲り) | 150 | 6.2 |
べにざけ | 127 | 4.5 |
かつお(春獲り) | 108 | 0.5 |
まだら | 72 | 0.2 |
同じくこってりとした味わいで知られるブリやサーモンよりも脂質が豊富であり、カロリーもやや高めです。
脂質が多い食品は太りやすいイメージがあるかもしれませんが、魚に含まれる脂質の大半は、脂肪として蓄えられるリスクの低い不飽和脂肪酸。
食べ過ぎなければ健康の妨げとなることはないため、安心して食卓にも取り入れられるでしょう。
さんまに期待できる効果は?
さんまから豊富に摂取できる成分には、さまざまな健康効果が期待できます。
さんまを積極的に取り入れるメリットについて、詳しく解説しましょう。
EPAやDHAが血液や血管を守る
魚類に含まれる不飽和脂肪酸のなかでも特徴的なのが、ω-3系脂肪酸の一種、EPAやDHA。
魚油とも呼ばれることがあるこれらの脂肪酸にはさまざまな健康効果が期待できるのです。
とくに魚油は血液をサラサラにする効果があることで有名です。
中性脂肪や悪玉と呼ばれるLDLコレステロールを減らす一方で、善玉であるHDLコレステロールを増やすようにも働くため、血中脂質のバランスを整えるために役立つでしょう。
増えすぎたLDLコレステロールが血中で酸化すると、血管壁を傷付けて動脈硬化の原因になることも。
動脈硬化が悪化すると血管が詰まりやすくなり、脳卒中や心筋梗塞など、重篤な疾患のリスクも高まるでしょう。
【魚類100gあたりの脂質量(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より)】
食品 | EPA(mg/100g) | DHA(mg/100g) |
さんま(皮つき) | 1500 | 2200 |
ぶり | 940 | 1700 |
たいせいようざけ(養殖・皮つき) | 330 | 510 |
かつお(秋獲り) | 400 | 970 |
べにざけ | 270 | 480 |
かつお(春獲り) | 39 | 120 |
まだら | 24 | 42 |
脂質が豊富なさんまには、EPAやDHAも豊富に含まれています。血液や血管の状態を若々しく保つため、さんまの摂取が役立ちそうですね。
ビタミンDとカルシウムで骨を丈夫に
さんまからはビタミンDやカルシウムも摂取できます。
カルシウムは魚の骨に多い栄養素。焼きたてのさんまは小骨もおいしく食べられるため、カルシウムを摂る手段としても効率的です。
カルシウムは言わずと知れた、骨を丈夫にするための栄養素。
骨粗しょう症を予防して将来の骨折のリスクを下げるため、魚類から積極的にカルシウムを摂りたいものですね。
ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、脂質の多いさんまにはとくに豊富です。
ビタミンDにはカルシウムの吸収率を高める働きがあるため、骨を丈夫にする効果をより高められるでしょう。
抗酸化ビタミンで若々しい体づくり
さんまから摂取できる脂溶性ビタミンとして、ビタミンAやビタミンEの働きも見逃せません。
これらのビタミンは「抗酸化ビタミン」とも呼ばれており、強い抗酸化作用を持つことで知られています。
私たちが呼吸や代謝を繰り返す過程で発生した活性酸素は、増えすぎると体の細胞を傷つけてしまいます。
血管や血液の状態を悪くすることに加え、髪や皮膚のトラブルを招き、老化の原因になることも。
抗酸化物質は、活性酸素の働きを抑えて細胞を守るように働きます。
加齢にともなう肌のシミやくすみ、白髪の増加を抑える効果が期待できるでしょう。
ビタミンAやEのほか、先ほどのEPAやDHAも抗酸化物質として機能します。
アンチエイジングに役立つ食品として、ぜひさんまを取り入れましょう。
さんまはどう食べるのがよい?
さんまには血液をサラサラにする効果や骨を丈夫に保つ効果、アンチエイジング効果などが期待できることがわかりました。
ではこれらの効果を得るためには、さんまをどのように食べるべきなのでしょう。
ここからはおすすめしたいさんまの食べ方について解説します。
旬のさんまは刺身がおすすめ!
脂の乗った旬のさんまは、刺身での摂取がおすすめです。
魚油は熱に弱く、加熱により一部が失われてしまうため、より効率的にEPAやDHAを摂りたい場合には熱を加えない生での摂取が効率的です。
外食先であればお寿司や海鮮丼などで、手軽に生のさんまを楽しめます。
スーパーで丸ごと売られているさんまは加熱用のため、刺身として売られているものを購入しましょう。
焼き魚はフライパン調理でお手軽に
熱に弱い魚油ですが、焼き調理であれば魚油の減少を少なめに抑えられます。
しかしグリルの使用では洗い物を面倒に感じやすく、さんまを焼きづらいと感じる方もいるかもしれません。
そこでおすすめしたいのが、フライパンを活用する方法です。
焦げ付きやフライパンへのこびりつきを防ぐため、油を薄く引いたうえでさんまを乗せましょう。
フライパン用のホイルシートがあれば、油なしでより綺麗にさんまを焼くことができます。
グリルなしでさんまをおいしく食べる方法として、ぜひ試してみましょう。
缶詰でカルシウムを効率摂取
缶詰は旬のものが使用されているケースが多く、栄養価の高いさんまを手軽に食べる手段としておすすめです。
缶詰は加圧調理により骨がやわらかくなっているため、中央の太い骨もあわせて食べられます。
カルシウムの効率的な摂取源として重宝するでしょう。
長期保存ができる缶詰は、自宅へのストックとしても最適です。
忙しい日や調理が面倒な日には、ぜひ栄養補給にさんまの缶詰を活用しましょう。
旬のさんまから良質な栄養素をたっぷり摂ろう
さんまからはEPAやDHA、ビタミンDにカルシウム、抗酸化ビタミンなど、若々しさや健康に関わるさまざまな栄養素を摂取できます。
魚油の効率摂取には刺身が一番ですが、香ばしい焼き調理やカルシウムが豊富な缶詰もおすすめ。
10~11月のさんまが最もおいしくなる季節に、ぜひさまざまな形でさんま料理を楽しみましょう。
<参考文献>
文部科学省 | 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(食品成分データベース)